某月某日。

 

とある法廷には、長年にわたって続けられていた「スイカは野菜か、果物か」という議論に終止符を打つべく、

スイカ=野菜説」をとる人々と、

スイカ=果物説」をとる人々が集まっていました。

 

ついに、この議論に決着のつく時が来るのです。

とはいえ、この問題が、数多くの人を苦しめてきた難題であることもまた確か。傍聴席では多くの人たちが、かたずをのんで議論の行方を見守っています……。

さあ、裁判長が入ってきました。

「スイカは野菜か、果物か」これより開廷!

(ドン、ドン)

裁判長裁判長

「えー。みなさん、ご静粛に。これより、スイカは野菜か、果物かという審議を開廷いたします。まずは、スイカが野菜と果物のどちらにあたるのか、それぞれの言い分を聞いてみようと思います。

えー、まずは、野菜説の方から」

まずは野菜説から、スイカが野菜である理由をとうとうと述べる

にんじん(野菜)にんじん(野菜)

「えー、それでは、申し上げます。私どもは、「スイカは野菜である」と主張いたします。

スイカとはそもそも、「西」の「瓜」と書きます。ということは、同じような瓜の中まであるキュウリ(胡瓜)やカボチャ(南瓜)などの仲間であるわけです。

したがって、スイカが野菜であるということに、まずは異議はないのではないかと思います」

 

裁判長裁判長

「えー、これに対し、果物説、何かありますか」

「スイカは果物」と主張、果物説のその根拠は

スイカ(果物)スイカ(果物)

「はい、大変大きな異議があります。瓜だろうとなんだろうと、そもそもスイカは食べた時に甘いですし、また食べる側もそれに期待している

(野菜側から「カボチャだって煮込めば甘いぞ」「サツマイモはどうだ。あれも果物か」とヤジ)

裁判長裁判長

「えー、不規則発言はつつしんでください」

スイカ(果物)スイカ(果物)

「続けます。

スイカは、大体において食べるタイミングが、ご飯を食べた後か、暑さまっさかりのおやつ時です。いいですか、何が言いたいかというとですね、夏休みにおばあちゃんの家に行って、集まったいとこたちと何人かで、虫採りか何かに行くとしますよ。

一通り働いてですね、「野菜」が出てきてごらんなさい。子どもとしてはやっぱりちょっと報われない感じはするでしょう。ね。スイカは果物なんです。

さらにいうと、スーパーマーケットでも、スイカは野菜売り場ではなくて果物売り場に置いてあります。このようなことからも、スイカは果物と言って差し支えないのではないでしょうか」

裁判長裁判長

「えー、野菜説」

そもそも野菜と果物、どう違うの???

にんじん(野菜)にんじん(野菜)

「ふん、状況証拠と情に訴えるだけで果物扱いとは、これだから学がない者は」

スイカ(果物)スイカ(果物)

「何ですって」

裁判長裁判長

「えー、ご静粛に」

にんじん(野菜)にんじん(野菜)

「よろしいか、果物とは、辞書的な定義でいえば、多年生の…つまり一本の木に何年間もなり続ける、果実類のことです。

スイカは、そもそも木ではありませんな。あれはつる性の植物です。それに、年に一回収穫したらまた植え直さなければいけません。よって、スイカはいろんな意味で「果物ではない」ということになります。

一方、野菜は「穀物以外の、食用目的で栽培する植物」という、非常にざっくりとしたくくりになっています。

したがって、どこからどう見ても「スイカは果物ではない」「スイカは野菜」と、こういうことになりますな。いや残念残念。ホッホッ

スイカ(果物)スイカ(果物)

「何を、頭でっかちの、スイカ頭っ」

にんじん(野菜)にんじん(野菜)

スイカ頭はお前だろっ!?笑笑笑

裁判長裁判長

「えー、スイカの名誉をきそんする言動は、つつしんでください」

 スイカにはいろんな食べ方があります

スイカ(果物)スイカ(果物)

「失礼しました。しかし、野菜説の方々が辞書だとか何とかいう学説だとかをたてにとったところで、何と言おうとスイカを料理で使うことはないわけです。

皆さん、スイカを焼いたところや、スイカを煮込んだところを想像してみてください。スイカの水分が抜けてスカスカになるか、あるいはズルズルと水っぽい感じがするではありませんか」

にんじん(野菜)にんじん(野菜)

「失敬だね君は!スイカはわざわざそんな大ざっぱな食べ方をしなくても、皮を塩もみしてごまあえにしたり、皮に刻んだ大葉をまぶして醤油をたらしたりしたら、これほどうまいものはないんだっ」

スイカ(果物)スイカ(果物)

「じゃあ、皮だけ野菜にしたらどうですか?果物として食べる時にはどうせ私たち皮は食べませんから、差し上げますよ。私たちが甘~い実の部分を、食べた後のを、ね」

にんじん(野菜)にんじん(野菜)

「バカにしてるのか!スイカへの愛がまったく感じられん!だいたい皮だけとはなんだ、皮だけとは。私たちは、スイカの実のところも冷麺に入れて、スイカの甘みを野菜としても楽しんでおる」

スイカ(果物)スイカ(果物)

「スイカへの愛が感じられないですって?とんでもない。

韓国には「花菜(ファチェ)」というデザートがあります。それは、スイカをくり抜いた後にですね、くり抜いた実と一緒に、他のいろんな果物とサイダーや牛乳を入れて、フルーツポンチみたいにして食べるという、夏やパーティーに最適のデザートなんですよ。

もう、完全に果物の仲間じゃないですか」


にんじん(野菜)にんじん(野菜)

「そんなことを言うなら、和歌山県や鳥取県では「源五兵衛スイカ」という品種のものを、丸のまま漬物にして食べるぞ」

傍聴席の人たち「スイカを?丸のまま!?」
(法廷、ざわつく)

裁判長裁判長

「えー、ご静粛に」

にんじん(野菜)にんじん(野菜)

「あ、いや、失礼、丸のままといってもそんなに大きくはないです。大きくなりきる前に取ってしまうので……。

まあともかく、それらはご飯のおともとして食べるので、ということはおかず、ということは野菜と言えるでしょうな」

裁判長裁判長

「えー、果物説」

国にとっての、スイカの食品としてのカテゴリーは?

スイカ(果物)スイカ(果物)

「なるほど、スイカにもいろんな食べ方があるようで、よく頑張って色々探してこられたなあという感じがいたします」

(野菜説の人、ムッとする)

スイカ(果物)スイカ(果物)

「ここに、一つの資料があります。文部科学省が出している、日本食品標準成分表(2015年版)です。

これの中で、スイカはどのカテゴリーに入ってるか、調べてみましょうか……。

スイカ(果物)スイカ(果物)

(わざとらしく)野菜、野菜、おやない……。

果物、「す」……

ありましたね。……お分かりですね、国がこう言ってるんですから。スイカは果物ってことで」

(ドン、ドン)

裁判長裁判長

「えー、それでは、審議に入ります。しばらくお待ちください……」

スイカは結局、野菜と果物、どっちなの???

裁判長裁判長

「えー、結論。『スイカは野菜でもあり、果物でもある』。

(法廷、またざわつく)

まさかの結論!その理由は???

(ドン、ドン)

裁判長裁判長

「えー、みなさん、ご静粛に。えー、そもそも、野菜と果物というのは、100%別物というわけではないのです。

植物学的な見方もあるでしょうけど、他にも商業という面からの見方や、文化という面からの見方もあります。現に、農林水産省ではスイカを「果実的野菜」といういい方で表現しております」

にんじん(野菜)にんじん(野菜)

「野菜じゃないか」

スイカ(果物)スイカ(果物)

「果実って言ってるじゃないか」

裁判長裁判長

「えー、たとえばですが、ひょっとしたら世界のどこかには、スイカをおかずにご飯やパンを食べる文化があるかもしれませんし、スイカの漬物をおやつにする文化だってあるかもしれません。

その時に、「えっ、果物なのにおかずにしてる」とか「えっ、野菜をおやつにしてる」とか、変なものを見る目で見ても始まらんわけです。

えー、大事なのは野菜も果物ももっとおおらかになって、美味しい食べ物を楽しめる幅を広げることなのではないかということをもちまして、えー、閉廷のあいさつにかえさせていただきます。
それでは、閉廷!」